Nitto

「グローバルニッチトップ™」戦略で
成長続ける日東電工

#1 見つけた! 日東電工のNo.1

先行者のいないニッチ分野で
トップシェア目指す
尖った製品をグローバルに展開

先行者のいないニッチ分野でトップシェア目指す尖った製品をグローバルに展開

先行者のいないニッチ分野でトップシェア目指す尖った製品をグローバルに展開

日東電工(Nitto)は、電子機器や自動車向けなどの高機能材料を中心に成長を続けてきた。その柱の一つとなっているのが「グローバルニッチトップ™」戦略だ。成長が期待されるマーケットで先行者のいないニッチ分野を見つけ、固有の技術を生かした製品でトップシェアを狙う――。具体的な製品群とともに、Nittoのグローバルニッチトップ™戦略について探った。

独自技術で優位性発揮し、
必要不可欠な製品を生み出す

 Nittoは、「グローバルニッチトップ」戦略を1996年から経営施策の柱の一つと位置付け、2002年には商標登録している。同社にとって「ニッチ」は単なる「すき間」という意味ではない。変化し成長している市場を見つけ、自社のさまざまな独自技術で優位性を発揮できる分野であることが肝になる。そうした分野で必要不可欠な製品を生み出し、世界トップシェアを目指す経営戦略だ。現在、同社内で「グローバルニッチトップ」製品と認定しているものは、精密回路付き薄膜金属ベース基板、熱はく離シート、ディスプレー用偏光フィルムなど15製品群以上を数える。

期待の材料
空気は通し水は通さないフィルター

 「グローバルニッチトップ」製品の次世代候補として注目されているのが、フッ素系機能性材料だ。同材料を含む機能材料事業は、1967年に上市したフッ素成型品からスタート。82年には現在主力となっているフッ素樹脂多孔質膜製品を世に送り出した。フッ素樹脂は、耐熱性やはっ水性、耐薬品性、離型性といった特徴を有する。一方、非常に特殊な材料で、扱いにくく加工しにくいこともあり、事業展開している企業は世界でも限られている。Nittoは、フィルム化技術、表面改質技術、祖業であるテープで培った粘着塗工技術、部材化技術などさまざまな自社技術を掛け合わせながら、フッ素そのものの特徴に新たな機能を付加したフッ素系機能性材料を相次ぎ開発してきた。現在フッ素樹脂では、Nittoを含む限られた数社で世界市場をほぼ独占している。

 フッ素系機能性材料の主力製品が高機能フィルムTEMISHだ。TEMISHの大きな特徴は、空気は通して水は通さないこと。Nittoが持つ延伸による多孔化技術などを生かし、樹脂を単にフィルム化するのではなく多くの微細な穴を設けることで実現した。現在、さまざまな用途で活用されており、スマートフォン、スマートウオッチ、イヤホンなどにはモバイル用TEMISHが搭載されている。水を通さないので、例えばお風呂に落としても使用でき、水中でも音が聞こえる。電動歯ブラシや水洗いできる電動ひげそりにも搭載されている。最新製品の防水機能は50~100mまで対応しており、入浴や水泳といったシーンでも使用可能だ。一方、電子部品用のTEMISHは、製造工程で使う多孔質膜で耐熱性にも優れ、自動車に搭載される電子制御装置ECUなど、発熱対策が必要な電子部品の通気膜や特殊なプロセス材としても採用されている。

見つけた!
フッ素系機能性材料「TEMISH」

フッ素系機能性材料「TEMISH」

フッ素系機能性材料「TEMISH」

 掃除機・空気清浄機のエアフィルター向けTEMISHの大きな強みの一つは、他のエアフィルター素材と比べ、ウイルスや細菌などの捕集効率と通気性が高く両者のバランスが良いことだ。捕集効率99.95%という数値は、米労働安全衛生研究所(NIOSH)認証マスクN95の95%を上回り、さらにN99にも適合し実際に採用もされている。また通気性の高さのお陰で高圧力をかけずに済むのでモーターのパワーを抑えられ、静音化や省エネにもつながっている。もう一つの強みは持続性だ。目詰まりしにくく、洗うこともできるので、長期間にわたり性能をキープし、クリーンな空気を提供する。ビル空調や車のエアコン、航空機のフィルターなどにも搭載されている。

「Nittoしか提供できないモノ」
グローバルに展開

 こうした高機能製品が搭載される最終商品は当然、ハイエンドな機種に限られる。例えば、掃除機や空気清浄機なら斬新な発想でデザイン性にも優れた海外メーカーの商品、自動車なら独メーカーの高級車――。海外のチャレンジングな企業に採用されている例が多く、8割ほどが海外向けだ。こうした先進企業とともに技術開発ができることは、Nittoの大きな強みになっており、「Nittoしか提供できないモノ」を生み出す力になっている。時差や言葉の壁を乗り越え、商習慣や文化の違い、メーカーごとに異なるサプライチェーンに臨機応変に対応しながら、「グローバルニッチトップ」戦略を進めている。

熱の力でテープをはがす――
電子部品の小型化にも対応
【熱はく離シート】

 「グローバルニッチトップ」製品の中で、長い歴史を持つのが熱はく離シートだ。加熱することで簡単にはがれ、電子部品の製造工程などで使用されている。開発のきっかけは、顧客からの「しっかり固定できて、はがしたい時に簡単にはがせるテープが欲しい」という声。もともと電子部品製造の工程で使われていたワックス方法では、はがす際に溶剤が必要だった。このため工程が煩雑で、簡素化したいという要望も根強く、最終的に加熱という方法に絞り込み1987年製品化に成功。近年ますます小型化が進む電子部品の製造にも大きく寄与している。

通す光を制御する――
より高精細な画像・映像へ
【ディスプレー用偏光フィルム】

 生活者に身近な「グローバルニッチトップ」製品の代表例にディスプレー用偏光フィルムがある。テレビやスマートフォンできれいな画像や映像を見るために、なくてはならない存在だ。1973年発売の液晶電卓から始まり、時計やゲーム機、ワープロなど、現在ではモバイル用途で広く使用されている。偏光フィルムは、一つの方向の光だけを取り出すフィルターの役目を果たす。2枚使うことで白黒2色を出す。光の波動などを変化させる位相技術も使って色を出す仕組み。電卓やゲーム機といった商品がコモディティー化していく中、光を制御するこうした技術や自社固有のフィルムを延伸させる技術などを生かし、用途転換を図ってきた。

技術と材料の掛け合わせ――
データセンター需要に応える
【精密回路付き薄膜金属ベース基板(CISFLEX)】

 情報通信技術が進展する中、大容量のデータを蓄積するデータセンター向けハードディスク駆動装置(HDD)のニーズは拡大している。Nittoは、このHDDに情報を読み書きさせる信号を伝送する精密回路付き薄膜金属ベース基板で、大きなシェアを持つ。1996年に上市したこのCISFLEXという製品も「グローバルニッチトップ」だ。エレクトロニクス分野では、耐熱性、絶縁性を有する化合物ポリイミドが多用されており、同社は耐熱性とトレードオフの関係にある感光性を付与する技術を持つ。この材料を掛け合わせ、より複雑な配線を可能にした製品だ。

「Nittoしか提供できないモノ」グローバルに展開

「Nittoしか提供できないモノ」グローバルに展開

新たな「ニッチ」見つけ、
課題解決する機能を加える

 Nittoの「グローバルニッチトップ」は、市場がないところに新しい市場をつくる戦略。既に世の中にあるものを置き換えるという発想ではない。顧客側は、Nittoしか提供できないモノを求めるという関係だ。それぞれの事業の成長の源泉は、世の中のニーズの変化に対応し開発を進め、導入製品の領域を切り開いてきたことにある。当初、採用されていた製品や技術がコモディティー化しても、新たな「ニッチ」を見つけ顧客企業の課題を解決する機能を加えながら、Nittoにしかつくれない尖った(とがった)製品を生み出してきた。

 例えば今、フッ素系機能性材料TEMISHで狙いを定めている分野は半導体と医療だ。半導体はこれからますます微細化が進み、さまざまな技術的課題が出てくると見込まれる。現在クリーンルームなどで活用されているが、製造プロセスなどでも新たな「ニッチ」が見つかりそうだ。医療分野では既に、手術室で使用するような特殊なマスクなどに採用されている。耐熱性が強く乾燥機を使っても性能が落ちにくく、耐薬品性も高いといった特徴が、医療分野で生かされるシーンは多そうだ。コロナ禍で医療への関心が高まる中、Nittoの「グローバルニッチトップ」製品は社会課題の解決という視点でも大いに期待される。

※「Global Niche Top/グローバルニッチトップ」「TEMISH」「CISFLEX」は、日東電工株式会社の登録商標です。

#2
髙﨑秀雄社長
インタビュー