物質ではない光をどう見せるか

大城健作 デザイナー

1977年、沖縄県生まれ。1999年、Scuola Politecnica di Design Milano卒業後、Lissoni Associati、BarberOsgerbyを経て、2015年にミラノでKENSAKU OSHIROを設立。ボッフィ、デパドヴァ、クリスタリア、リーン・ロゼ、ポルトローナ・フラウ、ザノッタなどのヨーロッパを拠点とする家具メーカーをはじめ、日本のアルフレックス ジャパンなどから家具を発表する。photo by Yukikazu Ito

ミラノに拠点を構えるデザイナー、大城健作氏はミラノ・デザインウィークに出展したNittoの「Search for Light」で『RAYCREA』をどのように見たのだろう。大城氏はScuola Politecnica di Designでデザインを学び、イタリアを代表するデザイナーのピエロ・リッソーニ、イギリスのデザインユニットのバーバー・オズガビーのスタジオでデザイナーとして活躍した経歴をもち、2015年には自らのスタジオを立ち上げた。現在はイタリアを代表する家具メーカーを中心に、日本でも活躍の場を広げつつある。

「実を言うと、当初は仕組みがどうなっているかわからなかったんです。『RAYCREA』でどのような光の表現が可能かを見ているうちに仕組みまで頭が回らなかったというか……。フィルム自体が何かしらの電源と繋がって発光しているものだと思っていたのですが、説明を聞くとフィルムで光の方向を変えているということがわかりました。それを理解すると、そのアイデアと仕組みに強い可能性を感じたのです。光源を見せずに発光させることができ、透明性を備えている。これらに、なにか面白い効果を得られそうだと思いました」

2021年にミラノデザインウィークで発表された、ポルトローナ・フラウの新作屋外用照明「スパークラー」。アウトドアでも使用可能な2サイズのフロアランプ、小型のテーブルランプの3種からなる。手で編まれたポリプロピレン製の紐をアルミニウム製の粉体塗装で仕上げたフレームは非常に軽く、床用ランプや屋外用天井ランプにも使うことができる。光源はUSBで充電可能な8Wのリチウム電池付きのLED。光、そしてそこから落ちる影をデザインしている。
courtesy of Poltrona Frau

そんな大城氏に『RAYCREA』を使ってデザインしたいプロダクトはあるだろうかと質問を投げかけると、「もう少し向き合わないと具体的なイメージは難しいですね」と笑って答える。ただ、「一つには大きな面が作れるという意味で、建築との相性は良いでしょう」と続ける。大城氏は現在、与論島で海洋教育とマリンアクティビティのための施設に取り組んでいる最中だ。プロダクトデザイナーの視点から建築に取り組み、水の循環による冷却システムなどを考案する。

「新しい素材だからこそ、光の効果、その可能性を模索する必要があります。これだけの素材ですから、これまでの素材にないイノベーティブな表現に挑めるでしょう。ガラスや鏡のような素材との組み合わせで面白い効果を起こすことができそうです」

大城氏は2021年、イタリアの家具メーカー「ポルトローナ・フラウ」からアウトドア用のランタン型照明「スパークラー」を発表した。線香花火という意味をもつ照明はベースにLED光源をもち、大中小からなる3サイズはいずれも片手で持ち運べるほどに軽い。

会場を訪れた大城氏。Nittoの開発担当者にいくつかの具体的なアイデアを出し、その実現可能性を質問した。会場での表現とはまた違うアイデアがいつか形になるかもしれない。
Photo by Yukikazu Ito

「光は物質ではありません。だからこそ、その存在をどう見せるかがデザイナーに問われます。かつて在籍した事務所でも、大手メーカーと建築的な照明からオブジェ的な照明まで幅広く開発に携わってきました。僕たちはすでに光源が白熱球からLEDに移行した体験を得ています。普及当初はなかなか慣れなかったものですが、いまではずいぶんと特性に合わせた表現が可能になりました。その違和感を乗り越え、特性を利点としていくことが『RAYCREA』においてもデザインの鍵となるのではないでしょうか。光に角度を与えられることに大きな可能性を感じます。さらにフィルムは加工性も高い。テクノロジーがあり、そこにデザインが融合する。そうすることで新しい光の表現が生まれるように思うのです」

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