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第6章 合成高分子がもたらした転機 自己融着テープ(1)

テープの歴史館

自己融着テープ(1)自分だけにつく絶縁用テープ

くっつかないけれど、くっつくテープ

くっつかないけれど、くっつくテープ。絶縁テープの中には、こんな不思議なものもあります。
粘着剤は塗布していませんが、2~3倍に伸ばしながら巻き付けると、テープの表と裏が密着して、きちんと一体になるのです。これが、自己融着テープです。

自己融着テープは、ブチルゴムからできています。ブチルゴムは、石油を原料とする合成ゴムで、1937年にアメリカのスタンダード・オイル社で開発されました。耐老化性、耐水性にすぐれ、高度な電気絶縁性を持っています。また、気体の透過率がきわめて少ない特性があるので、タイヤやチューブなどにも使われています。

自己融着テープは、このブチルゴムを加硫せずに使っていますから、もともと自分同士でくっつく性質を持っています。そのため、テープの間に特性の布セパレータをはさんで製品にしています。

使うときに「引っ張る」のがポイント

しかし、間に布セパレータがあると、使うときに不便ですから、日東電工株式会社ではセパレータのない自己融着テープも開発しました。
「伸ばして使う」というこのテープの使用法から発想して、テープの表面に薄い皮膜をつくってテープ同士がくっつかないようにしました。使うときにはテープを引き伸ばします。すると、皮膜が破れて、ブチルゴムが表面に出てきます。それで、くっつくようになるのです。

主に電線や地下ケーブルの接続部分に、絶縁用として使われています。伸ばしながら巻き付けてゴムの層をつくるのです。現場では、さらにこの上にビニル粘着テープで保護巻きをし、絶縁効果を高めています。
また、ゴルフのグリップやアイスホッケーのスティックに巻き付けて、滑り止めとして使われることもあります。

自己融着テープは、その名のとおり自分には付きますが、他の物に対しての粘着力はほとんどないため、「巻く」ことは得意ですが、平面などに「貼る」ことは苦手です。

自己融着テープは、通常の状態では粘着力がないが、
使用時に2倍程度まで伸ばすと強力な自己融着力を発揮する。

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