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特別対談「人財と共に未来を創るNitto流ESG戦略とは」(中編)

チャレンジを楽しむ企業文化へ

川内:今回、人財に関する未財務KPIの1つに「チャレンジ比率(価値創造にチャレンジする人財の比率)」も掲げられています。この「チャレンジ比率」というものもなかなかユニークな指標だと思いますが、どのような背景で設定されたのでしょうか。

大脇:これまでNittoはポートフォリオ戦略を重視していることをお伝えしてきましたが、裏を返すと過去の成功体験に縛られてしまうことへの危機感、という部分もあります。これは大企業の宿命でもあると思いますが、規模が大きくなるとどうしてもベンチャー企業のようにビジネスにおける危機感・切迫感が生まれにくくなりますので、改めてその点を意識するためにチャレンジ比率を掲げました。特に、今はグローバルに仲間がいますので、国境を越えて多くの人にチャレンジしてもらうには、私たちが「チャレンジを応援する文化」から「チャレンジを楽しむ文化」に変わる必要があると思っています。

守島:会社の文化を変える、つまり取り組みをカルチャーにまで昇華させるのは一筋縄ではいかないと思います。大企業とベンチャー企業の違いという話もありましたが、ベンチャー企業は、会社のサバイバルのためにチャレンジが必要という意識が違います。そうしたカルチャーができると、御社が掲げられる「チャレンジを楽しむ」ということが会社の価値観・文化になっていき、規模や社歴とは関係なく、“ベンチャー企業”になれるのではないでしょうか。

川内:「チャレンジを楽しむ文化」を育むためにチャレンジ比率を設定されたとのことですが、実際にそのチャレンジはどのように定義されているのでしょうか。

大脇:Nittoでは、「会社の価値創造に貢献するテーマ」をチャレンジの対象として設定し、それに取り組んだ社員をカウントしています。例えばグローバルで小集団改善活動に関する取り組みを行っていますが、毎年各エリアで予選を行い、その各エリア代表を集めてグローバル大会を開催しています。もちろんそこで優勝することも大切ですが、なによりその知識や経験を他地域に横展開することが重要だと考えています。小集団改善活動はチャレンジにカウントされるテーマの一例ですが、決して今決まっているものだけが全てではなく、各エリアや事業部からも積極的に声をあげてもらい、未来に向かってチャレンジにカウントされるテーマの数を増やしていきたいと思っています。

守島:「会社の価値創造に貢献するテーマ」ということで、何にでもチャレンジしていい、というわけではなく、例えばESGに関連するこの領域でチャレンジして欲しいと明確にされているのは、きっと社員目線でわかりやすいのではないでしょうか。特に現場で働かれている方からすると、日々の自分の活動が会社にどのように貢献しているか、なかなか実感が持てないと思います。チャレンジにカウントされるテーマの活動を通じて、自分のやっていることが会社のMissionやビジョンなどと繋がっていると感じられるのは素晴らしいですね。

川内:また社員からの自己申告制ではなく、しっかりと社員の方が取ったアクションとその結果でカウントされているのも、必ず未財務を財務に繋げようとされているからこそだと感じました。

大脇:ありがとうございます。もちろん最終的には未財務から財務に繋げていきますが、まずはチャレンジをカウントする、そのプロセスが重要だと考えています。もともと社内でNittoらしさは何か、という話をすると「チャレンジ」を挙げる声は多かったのですが、実際に測定したことはありませんでした。それなら測ってみようということで「チャレンジ比率」を設定しました。また測定すると現在値が見えてきますので、次のアクションにも繋がります。このプロセスを回していくことでチャレンジする人が増える、その仕掛けづくりを行っていきたいと思います。

守島:お話を聞いていて思ったのですが、チャレンジを測定するということは、個人の努力を認める(リコグナイズする)ということでもあると思います。決められた領域の中でのチャレンジではありますが、チャレンジを測定することで、社員は会社から自分がリコグナイズされていると感じると思いますし、目標が掲げられているので何にどう取り組むのかが自由なのも良い点ですね。

大脇:もちろん社内でも目標数値の合理性の議論はありましたが、なによりもまずはやってみる・チャレンジしてみることがNittoらしさでもあると感じています。

川内:今回の御社のケースを聞いていて、そもそも何をどのようにカウントするのか、決められない企業様も多いと思います。企業規模が大きくなると、どうしても会社として守る部分とチャレンジをする部分にわかれてくるかと思いますが、どのように両立されているのでしょうか。

大脇:基本的には、部門やその機能によってチャレンジの仕方が異なるだけで、どの分野でもチャレンジすることはできる、と私は考えています。ですので、小集団改善活動だけでなく三新活動もチャレンジの1つとしてカウントされますし、今後より多くの人が色々な場面での多様なチャレンジを認めるために項目を増やしていきたいと思います。
※三新活動とは、新用途開拓と新製品開発に取り組むことで、新しい需要を創造するNitto独自のマーケティング活動